「美の構成学 バウハウスからフラクタルまで」を読んだ
August 22, 2020
reading
lang-ja
Designputというpodcastで美の構成学 バウハウスからフラクタルまでという本が取り上げられていて面白かったので読んでみた。ざっくり概要が知りたい方はep10.11を聴いてみてほしい。
構成学とは著者曰く 「造形に共通する形体・色彩・材料に関するそれぞれの特性を明らかにするとともに造形とのかかわりを掘り下げる研究領域」 のことで,つまりは美しさの対象を分解してその美しさの理由を突き止めていく事であると思う。プロダクトのデザイン作業を逆再生で見ていくようなそんな感覚かもしれない。
本書では,前半を利用してデザインという概念がどの様に誕生したかを説明し,後半では黄金分割やフラクタルなど構成学を通して発見されたデザインの構成要素について説明している。個人的に興味深かったのは,以下。
- 産業革命を通して工業デザインという概念が成立した(それ以前は大量生産という概念がそもそも成り立たなかったので職人の手作業,応用美術、実用美術と称されるようなものであった)
- 工業化という生産システムの変革を通して規格の統一や標準化,生産性の向上という概念も成立していった。これは現在のソフトウェア開発などにも通じる所があるだろう
- 世界初の造形学校バウハウス。ここでは近代を支えるタイポグラフィ,エディトリアルや光,テクスチャといったものを取り入れたデザインの教育が実施されていた。戦中ナチスの圧迫を受け閉鎖に追い込まれるが要人がUSに渡りMITなど有名大学のUI/UX研究の下地を作った
- 元来芸術や美は非科学的なものとして捉えられてきたが近年のフラクタル理論や黄金率の発見などにより数学的な規則性を見出されつつある
- 美のセンスは先天的なものだと思われているが間違いであり,数学的分析や色彩分析など科学的なアプローチを身につける事や理解を通して後天的に身につけられるものである
後半の結論はやや陳腐なものだったが,現在に至るまでのインダストリアルデザインの成立の過程を世界史と絡めて理解できたのは面白かった。自分はフラクタル理論については詳しくないが,黄金率の章で「フィボナッチ数列というのは黄金比の連続による数列であるということがいえる。55:89 以降は限りなく黄金比に近づくことになる。」という記載があり文字通りのデザインパターンと数列との関連性について触れられていたのは斬新だった。